2012.05.28 Monday
「愛の年代記」読了
評価:
![]() 塩野 七生 新潮社 ¥ 460 (1978-03) コメント: 史実をもとに膨らませた九つの恋愛小説群。現代では考えられない残酷な結末も多いが、お話としてよく出来ている。 読後感が良いのはまるでマディソン郡の橋のような「エメラルド色の海」こっちはもっとプラトニックですが。お話として面白いのは「パンドルフォの冒険」あと「女法王ジョヴァンナ」 |
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これも週末に読了したのが、例によって塩野七生さんの「愛の年代記」。
史実かどうかともかくいろんな資料にもとづいて書かれた主としてイタリアを舞台にした歴史恋愛小説群です。
お話として一番面白かったのは「パンドォルフォの冒険」貞淑で信心深くい良妻と評判の女性と若い商人のあととりイケメンの火遊びのお話なんですが、鮮やかなエンディング。男にとってはともかくハッピーエンドではあるのですが、女は恐ろしい。
逆に心に沁みる美しいお話が「エメラルド色の海」トルコ海賊のウルグ・アリとサヴォイア公国の公妃の身代わりに立ったある貴婦人の秘められた恋の物語。たった一度の出会いをお互い一生胸に抱いてその後の人生を過ごすという意味ではマディソン郡の橋を思わせます。史実に基づいているものの、塩野さんがイメージを膨らませたところが大きいようです。
でも女性の権利が大きくなったのはやはり洋の東西を問わず現代なんですね。近代ではまだ男は浮気三昧。妻は不貞がばれると処刑されてしまうということで、現代では考えられない残酷な結末がたくさんあります。といいつつ不貞の話がたくさんあるのはやはり種の保存本能には勝てない?
あとこんな話もあったかもしれないと思わせるのがジュリア・デル・アルビッツィの話。ある意味女性にとって使い捨てにされる、なかなか過酷なストーリーですが、のちにこの女性は作曲家のカッツィーニに嫁いだとなっています。カッツィーニってあのアベマリアのカッツィーニなんですかね。とするとこのお話の中で現代に生き残ったのは最後にちょっと出てくるこの名前だけということになります。
中でやはり異色のストーリーは女法王ジョアンナ。修道士と修道女が道ならぬ恋に落ちて駆け落ちするわけですが、その過程でまわりの目をごまかすために修道女が男装して修道士になりすますわけです。
そのまま船に乗せてもらいアテネにたどり着いた二人ですが、ここでジョアンナ改めジョバンニは学識と美貌でイケメン修道士として注目を集めてしまい、ついには男を捨てて、女も捨ててローマに渡って法王庁に入ってしまう。ここでも能力を高く変われ神学校の教授に抜擢され、ついには若くして選挙で法王にまで上り詰めてしまうのですが、御付の若者に手を出してしまい妊娠。ミサの最中に出産してしまうというお話。
映画化もされた有名なお話のようですが、今日歴史学者からはほぼ史実ではないとされているようです。
この小説ではミサの最中に出産して、産褥で死んでしまい、生まれた子供は父親の若者に渡されて追放されるとなっていますが、これは優しいエンディングで、伝承では法王庁からミサに行く途中の路上で出産し、怒った民衆に母子とも虐殺されたことになっているものもあります。
カトリック教会が闇に葬った史実なのか、反カトリック勢力がでっち上げた都市伝説なのか。面白いお話ではあります。
塩野さんはロレンス・ダレルの小説「女法王ジョーン」を種本に書いたと書いていて、ロレンス・ダレルはギリシャの作家ロイディスの小説を下敷きにしたと書いているそうです。
ところが塩野さんはこのロイディスの小説というのは実在せず、ロレンスダレルの創作ではないかとあとがきで書いています。でもかくいうロレンス・ダレルの原作も少なくともネットでは見当たらないのですけどね。
これも週末に読了したのが、例によって塩野七生さんの「愛の年代記」。
史実かどうかともかくいろんな資料にもとづいて書かれた主としてイタリアを舞台にした歴史恋愛小説群です。
お話として一番面白かったのは「パンドォルフォの冒険」貞淑で信心深くい良妻と評判の女性と若い商人のあととりイケメンの火遊びのお話なんですが、鮮やかなエンディング。男にとってはともかくハッピーエンドではあるのですが、女は恐ろしい。
逆に心に沁みる美しいお話が「エメラルド色の海」トルコ海賊のウルグ・アリとサヴォイア公国の公妃の身代わりに立ったある貴婦人の秘められた恋の物語。たった一度の出会いをお互い一生胸に抱いてその後の人生を過ごすという意味ではマディソン郡の橋を思わせます。史実に基づいているものの、塩野さんがイメージを膨らませたところが大きいようです。
でも女性の権利が大きくなったのはやはり洋の東西を問わず現代なんですね。近代ではまだ男は浮気三昧。妻は不貞がばれると処刑されてしまうということで、現代では考えられない残酷な結末がたくさんあります。といいつつ不貞の話がたくさんあるのはやはり種の保存本能には勝てない?
あとこんな話もあったかもしれないと思わせるのがジュリア・デル・アルビッツィの話。ある意味女性にとって使い捨てにされる、なかなか過酷なストーリーですが、のちにこの女性は作曲家のカッツィーニに嫁いだとなっています。カッツィーニってあのアベマリアのカッツィーニなんですかね。とするとこのお話の中で現代に生き残ったのは最後にちょっと出てくるこの名前だけということになります。
中でやはり異色のストーリーは女法王ジョアンナ。修道士と修道女が道ならぬ恋に落ちて駆け落ちするわけですが、その過程でまわりの目をごまかすために修道女が男装して修道士になりすますわけです。
そのまま船に乗せてもらいアテネにたどり着いた二人ですが、ここでジョアンナ改めジョバンニは学識と美貌でイケメン修道士として注目を集めてしまい、ついには男を捨てて、女も捨ててローマに渡って法王庁に入ってしまう。ここでも能力を高く変われ神学校の教授に抜擢され、ついには若くして選挙で法王にまで上り詰めてしまうのですが、御付の若者に手を出してしまい妊娠。ミサの最中に出産してしまうというお話。
映画化もされた有名なお話のようですが、今日歴史学者からはほぼ史実ではないとされているようです。
この小説ではミサの最中に出産して、産褥で死んでしまい、生まれた子供は父親の若者に渡されて追放されるとなっていますが、これは優しいエンディングで、伝承では法王庁からミサに行く途中の路上で出産し、怒った民衆に母子とも虐殺されたことになっているものもあります。
カトリック教会が闇に葬った史実なのか、反カトリック勢力がでっち上げた都市伝説なのか。面白いお話ではあります。
塩野さんはロレンス・ダレルの小説「女法王ジョーン」を種本に書いたと書いていて、ロレンス・ダレルはギリシャの作家ロイディスの小説を下敷きにしたと書いているそうです。
ところが塩野さんはこのロイディスの小説というのは実在せず、ロレンスダレルの創作ではないかとあとがきで書いています。でもかくいうロレンス・ダレルの原作も少なくともネットでは見当たらないのですけどね。